「半朔望」の日記帳
2004年の日記


02月19日(木) 14:49:04

避難騒動の夏までラウンジにいて、その後様子を知らない。

地下のすみっこに座を占めて、
箱というものを知り始めた子供のように、
色んなものを集めたり並べたりしまったりしていた。
何かが漂流してくるのを待ってみた。


生きていると、だんだんと、箱に入れられないものを見つける。

箱に入らないだけでも、それまでのやり方で愛でるのは大変で、
しかもそれは動きたがって、動かなくなるとそれではなくなる。

立ち上がったり背伸びをしたり追っかけたり、棒立ちで見送ったりしなくちゃならない。


古い箱は荷物になるけど、
それも持ったままでいたいので、
荷造りを変えたり、
よく見て少し削ったり、
持つ手や背筋を鍛えたり、
歩きやすい道を探したり、
勝手に人の肩や背を借りたり、
手段を問わずあがいている。

コロは当面使わずとっておく。

  *

箱の中に、ラウンジで拾ったものもたくさん入っている。

  *

月がそろそろ、完全な新月。
その頃には出掛けて居ないので、これでおしまい。


・今日は、2004年2月19日です。
・日本時間で、14時48分55秒です。
・月齢は、 27.89 日(2409416秒)です。
・Lunation 1003の進行度は、94%です。
・3%の部分が輝いています。
・欠けて行く三日月です。


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|ー`)ノ ォッ。



02月18日(水) 22:48:51

誰かに話したい話がある。
誰でもいいわけじゃない。
吐き出すだけでもしたいけど、誰でもいいわけじゃない。

誰一人、知る由もない人はいない話。

  *

自分の発声を失う前に、
ピノキオの鼻が伸びきる前に、
話をしよう。

隣り合わぬ季節を待つ土を踏みに行く。
種を蒔く。雨が降る。

  *

一番話をしたいのは、
一番話したい話は出来ない人。

話したい話がつかえていても、
話を話すために生きるほど
達者な口の持ち主にはならない。


  *

陳腐な心理が手をいらわせて、掘るはずのない穴を掘った。
軽靡なまでの親しい心理。
子供が抱く毛布のような、みっともない宝。

手放すには、捨てるのではなく、綺麗にたたんでしまうこと。



02月17日(火) 22:56:51

同じことの裏と表を、まるで同じようにヒリヒリと愛でる。


誰かが自分のために泣くのを見たいと、
まだどこかで思っている。

  *

泣かせようなんて思わなかったと、嘘の謝罪をしたことがある。
図り違えたのは、ただ単に
何の感動も起こらない涙を見たこと。

泣く人もその動機も最初から期待しているのはひとつで、
他のものならないほうがましで、
しかもこれから泣いてほしいわけじゃない。

昔その場に居損ねて、罪悪感を見失った。
自分が誰かが泣くことに起因する、それが実質どれだけのことなのか、
想像の虚しさだけ実感していた。


たぶん、ほとんど誰も、誰かのために泣いたりはしない。
何かを抱えきれない時に、ただ泣くことが必要で泣いたりするのだ。

  *

抱えきれないほどたくさんのことを抱え込ませる存在から
目を逸らせずにいた。

泣ける時は泣いて、必要を満たして、少しずつ様々のことを定義し直す。



02月16日(月) 22:40:55

弦が下向きなら、矢をつがえる気にならずにいる。

  *

自分は根本的になっていなくて、
そのためにいつかは社会に痛い目に遭わされて、
それからやっと人並みになるのだと、
ある程度の根拠をもって考えていた。

自分をだめにしているのは自分だとも思っていた。

自分の外からやってくることで、
自分の中から襲ってくることより痛いことなんて、
滅多にないと気付いてきた。


目の覚めるほど痛いことを待てないとしたら、
どうやったら人並みになれるのか考えている。
自分が引け目を感じる「人並み」が、どれだけ中身のあるものか確かめている。
無効化できる見込みはないし、それを目指している訳でもない。

あるべき様があるならば、そこに収まれば、
見惚れるような何かが現れていることにきっと気がつく。

  *

気付かないことにすら気付かないことへの抵抗。



02月15日(日) 18:09:10

この州で一番古い塒のはたで、
花のけむる林の中で、
観世音菩薩は手を伸ばしていた。
施無畏印。

その背で、花弁を含んだ春の大気のコロイドが
ゆらりと大きく揺れるのが見えた。


決心を促した、たった一幕の風景。


揺れていた花弁の一枚一枚が、
その風景に至る長い長い時間と数奇すら
繰り返し思い起こさせる。

天然カラクリ絵箱。

  *

取りこぼさずに記憶できるほど端的な絵に帰納したから、
その決心を選択した。
忘るべからざる、初心のプロパティ。



02月14日(土) 00:00:40

・今日は、2004年2月14日です。
・日本時間で、0時0分37秒です。
・月齢は、 22.27 日(1924118秒)です。
・Lunation 1003の進行度は、75%です。
・49%の部分が輝いています。
・半月が過ぎたところです。



02月13日(金) 05:15:10

八方美人と思われても、
今は愛想を振りまく。
愛想を受け取る。

好意は、その大きさ深さに関わらず、火のコナだ。
自らインフレに身を投じても、そう思う。

昔、降りかかると驚いて、とっさに振り払ってばかりいた。
最初に与えられたものだけでたくさんだった。
最初から、返せないぐらい与えられている。

  *

たったひとつだけ大きな火種が育って、
残る火影は静かに跡を残す。

管理上の理想。



02月12日(木) 06:16:59

最初に与えられたものだけで満足していた。
充分に堪能していた。

だけど終わらない。
続く限り、最初に与えられたものは減り続ける。
どこかから調達しなければならない。
それが無粋だと思っても、自分から手を引く理由がない。
選択式の理由は、重すぎて無粋になる。
記述する言葉はない。


ひとまず、自分が食べたものの種を拾って蒔いてみる。
芽が出てきてもおかしくない。

ただそれだけで満足するぐらい、良いものを食べてきた。

それが小さな芽でも、
自分はただそれだけで満足するはずと見込んでいる。

  *

思い違えていたと悟れば、よそに探しに出かけることも、無粋ではなくなる。



02月10日(火) 07:04:10

暇を見つけて鏡を見る。

この顔は何をしそうな顔だろうか、と見据える。
この顔の人間に何をさせようか、と思案する。
自分に出来ないと思っていることのいくつが言い訳だろうか、と数え上げる。
自分の残りの人生に、いくつの位相がありうるか、と、妄想する。

  *

気付く余地すらないことなど、ほとんどない。
気付こうとしないことも、賢明な選択になる。

野にあるイノセンスを、過保護以外でどうやって保存しよう。

雨が降る。
雨ぐらいなら平気だろうか?

  *

気温が下がった朝は、身体が目覚めない。
昼と夕は身体と脳と神経がばらばらに疲労して、なかなかうまく機能しない。
使いにくい身体が面倒で、時間に関する印象の箱に、鬱を一つこぼす。

鏡の中に、何かをしそうな顔がある。

無力感に囚われながら、何かしら先に向けて思っている。
次に何かが起こるのに、足りないものを足さなきゃならない。
削るべきものを削らなきゃならない。

もし削りすぎても新しい何かで埋められるように、自分の材料を調べておく。
削ったものは戻さない。



02月09日(月) 07:09:49

断言しない。
断行しない。

大きく見る。
小さくなる。

少しずつ向きを与え合って、
不特定少数の、半ば予定された滑車に作用する。

 *

この機械人形は、うまく踊れない。

1/20スケールの人形は、習った踊りで遊んでいる。

歯車の回転は楽しげに見える。
機械人形も踊りを踊ろうとしている。



02月07日(土) 20:51:05

何ヶ月何万語かけても伝えきれない気がしたイメージを、
くどく説明した後で、
それをぴたりと表す一片の言葉を見つける。
数千万年の続きの一点で、たった数音の連なりに符合する。
少し退屈な予定調和。

その徒労感の先に、心からの嬉しさを感じること。

不如意にまつわる、病的な逞しさ。
病まぬ天然美と秤にかける時は、ピンセットを片手に、こちら側を加減する。



02月06日(金) 23:53:48

満月の日から、次の新月の日までの2週間。
口に堰をしたり、それを切ったり、それをそうしながら耳で聞くより、
指で独りごち、目で聞こう。

  *

月は欠けながら、もう一面の満月に近づく。
この目で見ない月を見る時間の方が、長いこの頃。



・今日は、2004年2月6日です。
・日本時間で、23時53分21秒です。
・月齢は、 15.26 日(1318882秒)です。
・Lunation 1003の進行度は、52%です。
・100%の部分が輝いています。
・満月です。