「半朔望」の日記帳 |
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避難騒動の夏までラウンジにいて、その後様子を知らない。 地下のすみっこに座を占めて、 箱というものを知り始めた子供のように、 色んなものを集めたり並べたりしまったりしていた。 何かが漂流してくるのを待ってみた。 生きていると、だんだんと、箱に入れられないものを見つける。 箱に入らないだけでも、それまでのやり方で愛でるのは大変で、 しかもそれは動きたがって、動かなくなるとそれではなくなる。 立ち上がったり背伸びをしたり追っかけたり、棒立ちで見送ったりしなくちゃならない。 古い箱は荷物になるけど、 それも持ったままでいたいので、 荷造りを変えたり、 よく見て少し削ったり、 持つ手や背筋を鍛えたり、 歩きやすい道を探したり、 勝手に人の肩や背を借りたり、 手段を問わずあがいている。 コロは当面使わずとっておく。 * 箱の中に、ラウンジで拾ったものもたくさん入っている。 * 月がそろそろ、完全な新月。 その頃には出掛けて居ないので、これでおしまい。 ・今日は、2004年2月19日です。 ・日本時間で、14時48分55秒です。 ・月齢は、 27.89 日(2409416秒)です。 ・Lunation 1003の進行度は、94%です。 ・3%の部分が輝いています。 ・欠けて行く三日月です。 | |ー`)ノ ォッ。 |
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誰かに話したい話がある。 誰でもいいわけじゃない。 吐き出すだけでもしたいけど、誰でもいいわけじゃない。 誰一人、知る由もない人はいない話。 * 自分の発声を失う前に、 ピノキオの鼻が伸びきる前に、 話をしよう。 隣り合わぬ季節を待つ土を踏みに行く。 種を蒔く。雨が降る。 * 一番話をしたいのは、 一番話したい話は出来ない人。 話したい話がつかえていても、 話を話すために生きるほど 達者な口の持ち主にはならない。 * 陳腐な心理が手をいらわせて、掘るはずのない穴を掘った。 軽靡なまでの親しい心理。 子供が抱く毛布のような、みっともない宝。 手放すには、捨てるのではなく、綺麗にたたんでしまうこと。 |
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同じことの裏と表を、まるで同じようにヒリヒリと愛でる。 誰かが自分のために泣くのを見たいと、 まだどこかで思っている。 * 泣かせようなんて思わなかったと、嘘の謝罪をしたことがある。 図り違えたのは、ただ単に 何の感動も起こらない涙を見たこと。 泣く人もその動機も最初から期待しているのはひとつで、 他のものならないほうがましで、 しかもこれから泣いてほしいわけじゃない。 昔その場に居損ねて、罪悪感を見失った。 自分が誰かが泣くことに起因する、それが実質どれだけのことなのか、 想像の虚しさだけ実感していた。 たぶん、ほとんど誰も、誰かのために泣いたりはしない。 何かを抱えきれない時に、ただ泣くことが必要で泣いたりするのだ。 * 抱えきれないほどたくさんのことを抱え込ませる存在から 目を逸らせずにいた。 泣ける時は泣いて、必要を満たして、少しずつ様々のことを定義し直す。 |
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弦が下向きなら、矢をつがえる気にならずにいる。 * 自分は根本的になっていなくて、 そのためにいつかは社会に痛い目に遭わされて、 それからやっと人並みになるのだと、 ある程度の根拠をもって考えていた。 自分をだめにしているのは自分だとも思っていた。 自分の外からやってくることで、 自分の中から襲ってくることより痛いことなんて、 滅多にないと気付いてきた。 目の覚めるほど痛いことを待てないとしたら、 どうやったら人並みになれるのか考えている。 自分が引け目を感じる「人並み」が、どれだけ中身のあるものか確かめている。 無効化できる見込みはないし、それを目指している訳でもない。 あるべき様があるならば、そこに収まれば、 見惚れるような何かが現れていることにきっと気がつく。 * 気付かないことにすら気付かないことへの抵抗。 |
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この州で一番古い塒のはたで、 花のけむる林の中で、 観世音菩薩は手を伸ばしていた。 施無畏印。 その背で、花弁を含んだ春の大気のコロイドが ゆらりと大きく揺れるのが見えた。 決心を促した、たった一幕の風景。 揺れていた花弁の一枚一枚が、 その風景に至る長い長い時間と数奇すら 繰り返し思い起こさせる。 天然カラクリ絵箱。 * 取りこぼさずに記憶できるほど端的な絵に帰納したから、 その決心を選択した。 忘るべからざる、初心のプロパティ。 |
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・今日は、2004年2月14日です。 ・日本時間で、0時0分37秒です。 ・月齢は、 22.27 日(1924118秒)です。 ・Lunation 1003の進行度は、75%です。 ・49%の部分が輝いています。 ・半月が過ぎたところです。 |
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八方美人と思われても、 今は愛想を振りまく。 愛想を受け取る。 好意は、その大きさ深さに関わらず、火のコナだ。 自らインフレに身を投じても、そう思う。 昔、降りかかると驚いて、とっさに振り払ってばかりいた。 最初に与えられたものだけでたくさんだった。 最初から、返せないぐらい与えられている。 * たったひとつだけ大きな火種が育って、 残る火影は静かに跡を残す。 管理上の理想。 |
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最初に与えられたものだけで満足していた。 充分に堪能していた。 だけど終わらない。 続く限り、最初に与えられたものは減り続ける。 どこかから調達しなければならない。 それが無粋だと思っても、自分から手を引く理由がない。 選択式の理由は、重すぎて無粋になる。 記述する言葉はない。 ひとまず、自分が食べたものの種を拾って蒔いてみる。 芽が出てきてもおかしくない。 ただそれだけで満足するぐらい、良いものを食べてきた。 それが小さな芽でも、 自分はただそれだけで満足するはずと見込んでいる。 * 思い違えていたと悟れば、よそに探しに出かけることも、無粋ではなくなる。 |
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暇を見つけて鏡を見る。 この顔は何をしそうな顔だろうか、と見据える。 この顔の人間に何をさせようか、と思案する。 自分に出来ないと思っていることのいくつが言い訳だろうか、と数え上げる。 自分の残りの人生に、いくつの位相がありうるか、と、妄想する。 * 気付く余地すらないことなど、ほとんどない。 気付こうとしないことも、賢明な選択になる。 野にあるイノセンスを、過保護以外でどうやって保存しよう。 雨が降る。 雨ぐらいなら平気だろうか? * 気温が下がった朝は、身体が目覚めない。 昼と夕は身体と脳と神経がばらばらに疲労して、なかなかうまく機能しない。 使いにくい身体が面倒で、時間に関する印象の箱に、鬱を一つこぼす。 鏡の中に、何かをしそうな顔がある。 無力感に囚われながら、何かしら先に向けて思っている。 次に何かが起こるのに、足りないものを足さなきゃならない。 削るべきものを削らなきゃならない。 もし削りすぎても新しい何かで埋められるように、自分の材料を調べておく。 削ったものは戻さない。 |
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断言しない。 断行しない。 大きく見る。 小さくなる。 少しずつ向きを与え合って、 不特定少数の、半ば予定された滑車に作用する。 * この機械人形は、うまく踊れない。 1/20スケールの人形は、習った踊りで遊んでいる。 歯車の回転は楽しげに見える。 機械人形も踊りを踊ろうとしている。 |
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何ヶ月何万語かけても伝えきれない気がしたイメージを、 くどく説明した後で、 それをぴたりと表す一片の言葉を見つける。 数千万年の続きの一点で、たった数音の連なりに符合する。 少し退屈な予定調和。 その徒労感の先に、心からの嬉しさを感じること。 不如意にまつわる、病的な逞しさ。 病まぬ天然美と秤にかける時は、ピンセットを片手に、こちら側を加減する。 |
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満月の日から、次の新月の日までの2週間。 口に堰をしたり、それを切ったり、それをそうしながら耳で聞くより、 指で独りごち、目で聞こう。 * 月は欠けながら、もう一面の満月に近づく。 この目で見ない月を見る時間の方が、長いこの頃。 ・今日は、2004年2月6日です。 ・日本時間で、23時53分21秒です。 ・月齢は、 15.26 日(1318882秒)です。 ・Lunation 1003の進行度は、52%です。 ・100%の部分が輝いています。 ・満月です。 |