「回顧録」の日記帳 |
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03/06/07 第二章:覚醒 ハンドルをつけてもらってしばらくは、多分1週間くらいの間は、 それだけで満足していたように思う。 「コテハン命名スレで名前をもらった奴が雑談するスレ」か何かで、 東京リハビリボーイズとかそんな奴が立てたスレで、なんとなく 書き込みをしていた。 でも、すぐに物足りなくなった。 別に対して面白くも無い。これだったらチャットのほうがすぐに反応が見えて 楽しいじゃないか。 だからといって、毎日毎日「こんばんは〜、みんなどこの人ですか?」から 始まるチャットに戻ろうとは思わなかった。 何か面白いことを見つけてやろう、漠然とそう思っていた。 まっさきに目を引いたのは「煽り」だった。 毎日毎日、誰かしらが誰かしらと口げんかをしている。 そういうスレはとにかく流れが速かった。 スレが伸びるということは盛り上がっているということで、 スレを盛り上げることが良いことなのだと理解し始めた。 なんだかんだ文句を言われながらも、煽り煽られている固定は 板の人気者なんだということを少しずつ理解した。 あいつら、楽しそうだな。 俺ももっとこう、中心に行きたいよな。 そう思った。 最初に目をつけたのは、開店寿司だった。 たまたまその時期、2001年の1月くらい、アクティブに活動していて、 というかたまたまあの日、目についたのが彼の煽りだったというだけだったと思う。 スレはそこそこ伸びていた。 わけもわからず、いきなり途中参加で喧嘩を売った。 見事なまでに喰らいついた。彼ではなく、俺がだ。 一言一言がいちいち癪に障った。 学校にはちゃんと行ってない、単位は取れてない、世間的に見れば ただの駄目人間でしかなかった自分を見透かされて、全てを知った上で 高い位置からバカにされているような悔しさがあったのだろう。 「電話してこい」と彼は言った。 当時のラウンジは、まだ電番晒しにそれほど耐性はなかっただろうし、 何より自分自身がそういう行為に対して全く経験が無かった。 「こいつ狂ってるのか?」 「ネットで電話番号書くなんて、どういう神経してるんだ」 「ここまでやられて電話しなかったら散々ヘタレとか言われるんだろうな」 「それは悔しい、絶対に嫌だ」 「でも、こんな簡単に書くってことは、何かよっぽど自信があるのだろうか?」 「いたずらされても平気だっていう裏づけがあるとか」 「もし『なんじゃワレ』みたいな人が出たらどうしよう・・・」 「そんなこと考えてるうちに時間が経っていく」 「ええい、もうどうでもいい、電話してしまえ!」 プルルルル (ドキドキ) プルルルル (ドックンドックン) プルルルル (あーやっぱやめといたほうがよかっt) ブッ 「は〜い、開店寿司でぇ〜す♪」 「も、もしもし、刺身ぶーめらんです・・・」 カンペキに向こうのペースに飲まれた。 何をどれくらい話したのだろう。 彼は言った。「煽りはゲーム、遊び感覚だ」と。 彼は言った。「みんなそれをわかった上でやってる」と。 彼は言った。「餅もそうだ」と。 ラウンジの、煽りの、裏の世界を知った気分になった。 煽りというゲームが、とてつもなく面白いと感じ始めた。 自分が顔を真っ赤にして、つたないタイピングでキーを打っていたから、 相手も同じように怒り狂っているものだとばかり思っていたが、 そうではないということを知った。 この頃から、漠然とだが、「ラウンジで一番すごいのは餅だ」という印象が 植えつけられていたのだと思う。 もしかしたら、自分が一番最初に意識した固定ハンドルの名前を覚えていたの かもしれない。 翌日、餅に喧嘩を売った。 板を見に行き、彼をみつけるとすぐに斬りかかった。 レスが遅いだのなんだの、散々コテンパンに言われたが、とにかく必死で喰らいついた。 ロッキー・バルボアがどうとか言って、餅VS刺身☆ブーメランのタイトルマッチだとか 言い出す奴がいた。スレまで立ったかもしれない。 調子に乗って、刺身☆ブーメラン@ロッキー・バルボア、なんて名前にしたりした。 ロッキー・バルボアはサッカー選手だと言われたが、ずっと映画のロッキーのことだろと 思っていた。今でもそんなサッカー選手がいたのかどうかなんて知らない。 ある程度時間がたって、名無しが餅に昨日の開店とのスレのログを見せた。 開店と電話したことを知って、餅は全てを悟ったようだった。 煽りがゲームであることをこいつは知っている、わかって演じている。 それを知って興味をなくしたのか、いいかげん寝たくなったのかはしらないが、 「なんだ、もうお前の勝ちでいいよ」と彼は言った。 背中がぞくそくするような、今まで体験したことのない感覚が体を走り抜けた。 「餅ってのはすごい奴だ、俺もこいつみたいになりたい、煽りで餅のような 名声を手に入れたい」と思った。 刺身☆ブーメランが煽り固定として目覚めた瞬間だった。 |