夏の想い出 |
父の実家は山奥にあるのです。 俺はそこに自転車で遊びに行き、すぐに裏山に行くのです。 買ったばかりの麦わら帽子の紐がやけにくすぐったくて。 ほどきたいけど、ほどくと無くしてしまう。
そんなもどかしさに夏の訪れを感じつつ沢へと向かうのです。
沢ではハヤなどが涼しげに遊んでいるのです。 釣り道具など持っていない俺は 近くの笹を折り取り、釣り竿代わりにして垂れてみるのです。 死んでしまった爺さんが昔していたように。
俺は糸も針も付けずに、ただぼんやりと。
ケヤキの木の間を流れる風のみがその釣り竿を揺らすのです。 そこで俺は「さっぱり釣れないな」という表情を真似たあと、沢に足を浸すのです。 ひやりとして心地よかった。
しかしその山々もバブル期のゴルフ場建設の憂き目にあい
今は芝の貼られた綺麗なゴルフ場に変わりました。
構内道路に暗渠となった沢があり、その上を通るたび 決して釣ることの無かったハヤたちと冷たい沢水達を思い出すのです。
…大人になると云うことはいろいろなモノを失うと云うことなんだなぁ。 |
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